この魚はどこから来た?この米は誰が作った?「食べものになる前」を想像してみよう
「ひれは、魚ごとに形が違うよ」。魚をさばいてすしにする様子を見せる、子ども向けワークショップのひとコマ。包丁を握るのは、すし作家の岡田大介さんです。岡田さんはすし職人として魚をさばいているとき「この魚はどんな海を泳ぎ、誰が釣ったのだろう」と、ふと考えます。食べものになる前を想像してみたら、たった一貫のすしにも魚や米などたくさんの魂がこもっていると実感したのだそう。以来、それを子どもたちに伝える活動をしています。「食べものを大切にしましょう、と言うのではなく、食べものも元は自分たちと同じように生きものだったと見せることで、食べものに対する意識が変わる。それを伝える最高の教材がすしでした」。
絵本のテーマは「命」。重いテーマだからこそポップに作った
岡田さんは昨年、子ども向けの写真絵本『おすしやさんにいらっしゃい!生きものが食べものになるまで』を出版しました。魚がすしになるまでを図鑑のように分かりやすく見せる児童書です。「テーマは”命をいただく”という重いものですが、あえて楽しく、ポップな雰囲気の本にしました」と岡田さん。その反響は子どもだけでなく親からも大きいといいます。最後のページにある「ごちそうさまでした」の言葉に、命の重みを込めています。
日本絵本賞、産経児童出文化賞JR賞をW受賞!


『おすしやさんにいらっしゃい! 生きものが食べものになるまで』(岩崎書店)
- 魚だって食べるし、うんちもする。絵本だからこそじっくり観察できる
「絵本を作ろうと思ったのは、子どもたちが自分のペースで魚を観察できるから。子どもが魚に触れる機会って実は少ないんですよ」。魚のうんちや胃袋の中など、スーパーで眺めるだけでは分からない魚の様子も楽しめる。
- 数十年後にはコンブがとれなくなる?すしをきっかけに海に興味を持ってほしい
全国の学校などをめぐり命の大切さを伝えている岡田さんですが、もうひとつの思いが。「魚をきっかけに、海に興味を持ってほしい。水産資源の枯渇や環境変化は深刻。未来を担う子どもたちに、それを伝えていければ」。

江東区豊洲図書館 令和4年5月21日開催の講座にて
- 魚をさばける人は約4人に1人しかいなかった!
あなたは魚をさばけますか?

20~60代の70%以上が、魚をさばけないと回答。年齢が若いほど、また、既婚者より未婚者の方がさばける人は少ない傾向に!
※2019年しらべぇ編集部(全国1589名の男女によるインターネットアンケート)より
生きものが食べものになるまでを解説してもらいました!
●”魚”から”すし”に。ありのままを見せることで”命”をいただいているのだと伝わる
ワークショップでは、子どもたちに最初に魚をたっぷりと観察してもらう。初めは「触りたくない」と言っている子どもも、「ここは危険な場所だよ」、「口の中はどうなっているかな?」と説明すると興味津々になるのだとか。

塩焼きや刺し身でもおなじみの、あじ。尾に近い体の側面に、敵から身を守るためのギザギザのうろこがある。
●さばく前にたっぷりと観察
口に歯はある?

口を大きく開けると、奥の方に舌が見えて歯がないのが分かる。今回のあじはメス。オスだと白子が入っている。

性別はおなかを切って初めて分かる!
骨からいいだしがとれるんです。

頭を切って、内臓を取り除き、うろこを取って三枚に。「骨の部分は、関節に刃を入れるとコラーゲンが溶け出ていいだしに」と説明しながら、手際よくさばいていく。
手でふわっと握って。

酢飯をまとめて優しく握り、あじの切り身をのせたらふわっと握る。指と手のひらでリズミカルに仕上げる。

一匹のあじから、すしが完成。「この魚に出合えたのも運命、ありがとう。そんな気持ちで握っています」。