「今、死んだら後悔しない?」55歳で美大生になった、おぐらなおみさんの挑戦

「今、死んだら後悔しない?」55歳で美大生になった、おぐらなおみさんの挑戦

「もし今死んだら? そのとき後悔したくない」――。 50代を迎え、更年期の不調や将来への問いと向き合った末に、長年の夢だった美大進学を決意。まんが家・イラストレーターとして活躍する、おぐらなおみさんの50代で見つけた新しい人生の楽しみ方をご紹介します。

※この記事は雑誌『サンキュ!』2025年4月号の特集「シンプルで満ち足りた50代の暮らし」の内容を一部抜粋・掲載しています。

54歳で美大生に。まんが家・おぐらなおみさんのライフシフト

プロフィール

おぐらなおみさん

おぐらなおみさん(東京在住・まんが家/イラストレーター)

  • 55歳
  • 28歳と22歳の子の母
  • 3人&2匹暮らし

夫(56歳)、長男(22歳)、猫の二位(にい・18歳)、園(えん・14歳)と暮らす。長女(28歳)は独立。仕事はまんが家・イラストレーター。Instagram@ogura.naomiで美大で制作した作品やエピソードを発信。『ワーママは今日も崖っぷち。』を連載中。

※2025年2月取材時点

子どもの頃から絵を描くのが好きだったと話すおぐらさん。「でも私には美大に行くほど特別なセンスや才能はないと思って普通の大学に進学しました」。30代でまんが家デビューし、40代は仕事量も収入もピークに。それでも美大で学びたいという思いは消えないどころか、年を重ねるごとに募るばかり。

更年期の不調を機に「後悔したくない」と一念発起

50代になると仕事が減り、心身も大きくゆらぎます。「更年期でものすごい動悸とか滝のような汗といった不調に襲われて。自分も年をとり、いずれ死ぬことをリアルに理解したんです。『もし今死んだら? そのとき後悔したくない。美大進学の夢を実行に移そう』という思いが湧いてきました」。

そこから画塾に通ってデッサンを学び直し、受験。54歳で美大生になりました。

「楽しくて仕方ない」50代で送る充実の学生生活

美術の得意な人が集まって、みんなで美術の勉強していることがすごく新鮮。授業も図書館も充実して『さあどうぞ美術を学んでください!』という環境に身を置き、知識やできることが増えていく。こんな体験、人生初めて。思うように課題をこなせずくじけそうになることもあるけれど、学生生活が楽しくて仕方ないです。

50代からの新習慣。おぐらさんが手放したこと・変えたこと

【仕事】長く、いつまでも書き続けるために

30代でまんが家になる夢をかなえ、40代は依頼を断らず必死に描いてきたと話すおぐらさん。「50代は今専攻している木版画の制作とまんがの執筆、両方を楽しみたいです」

理想は、同世代のまんが家である伊藤理佐さん・益田ミリさん・野原広子さんのように、フレッシュな作品を長く生み出し続けることですね。

タブレットでまんがを描いている画像

がむしゃらに仕事するのは40代で終わりにしました。

【学び】本気で学ぶための美大という選択

「息子が大学生になりべんとう作りは卒業。夫と息子に朝夕の食事を用意しなくても、自力でなんとかしてくれる。これなら大学に通えるかも?と」。前は遠くにあった死を更年期の不調で初めて意識したことも後押しになりました。

おぐらさんの授業風景

下の子の大学進学と自分の更年期がきっかけで美大進学を決意。

学費を自分で払ってるから絶対元を取る!

習い事を楽しむのではなく、自分を追い込んで真剣に学びたくて美大を選びました。学費は2年間で約300万円。1時間の授業で約3000円も払っている計算になるから、本気です。吸収できることは全部身につけて卒業します!

画材の画像

【家族】思い込みを手放したら、みんな意外と「できる」

まんが家だから前はずっと家にいて、家事=私の仕事と思っていました。でも、朝から夕方遅くまで外出する学生になって、家族を頼ったら長男は私よりトイレ掃除がうまいし、夫も適当にご飯を作って食べている。ウチの家族は何もできないって、私の思い込みだったんですね。

トイレ掃除している画像

家事を120パーセントやるのも手放したら、息子も夫も意外と”できる”と気づきました

編集部ボイス:50代は、人生の「後悔」を「希望」に変える時間

「もし今死んだら後悔しないか?」という問いは、時に厳しいけれど、自分の本当の望みを教えてくれる強力な羅針盤になります。

おぐらさんが美大へ進んだことは、単なるスキルアップ以上の意味があるように感じます。それは、「家事の担い手」や「働き盛り」というラベルを一度脱ぎ捨て、もう一度自分自身に戻るための儀式だったのかもしれません。

家族への信頼、仕事との程よい距離感、そして新しい学びへの情熱。おぐらさんの笑顔からは、年齢を重ねたからこそ味わえる「自分のための時間」の尊さが伝わってきます。50代は、新しい夢を見るのに決して遅すぎることはないのです。

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