【連載】熟れすぎMANGO VOL.132

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ちはるの老眼鏡!?「ノンフィクション人生」

怒れる人たち

ジリジリと夏がやってきた。ただでさえ暑いのに、近頃のニュースやSNS、テレビのワイドショーはムキーッと熱い「怒り」を巻き散らかす人たちを取り上げている。見ているだけで熱中症になりそう。

怒れる人たちはムダに正義感が強い。「お前のことを思って!」「あなたのために!」という気持ちがどんどんねじ曲がって、いつの間にか「私をこんなに怒らせて傷つけて、許さない!」に変わってしまっている。どれもこれも人間の口から出た「言葉」が原因。渥美清さん演じる寅さんではないけれど「それを言っちゃあ、お終いヨ」という歯止めもなく、言葉はどんどん人を傷つけ自分勝手になる。「口は災いの元」「言わぬが花」「沈黙は金なり」という、子どものころに聞いた格言はもはや死語なのだろうか。

先日、大雨の日にピザを頼んだ。こんな日は宅配を頼む人が多いのだろう。通常なら30分ほどで届くピザが2時間もかかって到着。しかも、Lサイズを頼んだのにまさかのMサイズ! お腹を空かせて待っていた旦那くんが珍しく怒った。「いくらなんでも遅すぎだろ!」雨に濡れた子犬のような、ちょっと弱々しそうな宅配のお兄さん。少し気の毒に思い怒れる旦那くんをなだめようとしたが、このお兄さんの受け答えが素晴らしくて、感心してしまった。

「本当ですよね。僕も遅すぎると思います。怒る気持ちわかります。適当な対応して、すみません!」怒れる人は共感されると弱いのだ。俺の怒りを分かってくれるなら、ま、まあ仕方ないしな。そんな空気になったところで、「大体バイトの数が少なすぎるんですよ。もう店ん中パニックで……いや、こっちの問題っすよね。本当にご迷惑かけました!」と、帽子を取り、頭を下げるお兄さん。「ああ、そうだよなぁ。大変だよなぁ」相手の弱みも見せられ、すっかり同情に変わっていく旦那くん。取り替えも値引き交渉もせず、なんだか清々しい面持ちになってMサイズのピザを受け取っていた。「がんばれよー!」「ハイ! 頑張りますッ!」

このやり取りは、簡単そうでなかなか出来るものじゃない。あのお兄さんはきっと出世するだろう。最近の人たちはあまり怒られ慣れていない。強く感情をぶつけられると、まず首をかしげて「いや、それはそうですけど、なんか、大丈夫ですか?」と、まず怒られたことを受け止められず、自分を保身して微妙な雰囲気をさらに悪化させる。大丈夫じゃないから怒っているのだ。まず怒りを受け止め、相手の感情を理解して状況を探る。そういうことが当たり前にできたら、いい具合の「喜怒哀楽」な世の中になるのになぁ、と思う。

文/ちはる

ちはる/テレビ、CF、著書の企画などで活躍中。12年、14歳年下の旦那くんと再婚。目黒でカフェ「チャム・アパートメント」を経営。

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